
2026/10/26
小さな店の集客、実例に学ぶ|SNS・地域連携・体験・クラファン・リピーターづくり、8つの店で効いたこと
有料広告に頼らずお客さんを集めた小さな店の実例を集めました。f.は来店客の約9割がネットの情報がきっかけ、kenohiは来店の61%が2回目以降、Yamanaka Terraceは地元約15者のマルシェとSNSでフォロワー約5,000人。何が効いたかを表で比べます。
- Aネットの情報がきっかけの来店
- 約9割f.(新潟県燕市のベーカリー)
- A2回目以降の来店の割合
- 61%kenohi(東京)の開業1年目。新規は39%
- Aイベントの発信で増えたフォロワー
- 約5,000人Yamanaka Terrace(山梨県山中湖村)
- A体験授業から開いた教室の生徒
- 15人で開講ポケット美術教室(東京都品川区)
- A会場の協力で埋まったクラス
- 定員15人×2クラス大人のバレエ教室SAY(大阪市)
- Aクラウドファンディング
- 341万円HAA for bath(大分県別府市)。目標の7倍弱
小さな店の集客は、広告費の多さより、来るきっかけを自分でつくり、来た人にもう一度来てもらう工夫で差がつきます。新潟県燕市のベーカリー「f.」は来店客の約9割がインターネットの情報をきっかけに来ており、東京・武蔵小山の喫茶食堂kenohiは有料広告を使わずに、開業1年目の来店の61%が2回目以降のお客さんでした。
このページでは、公的な調査や本人の記録で数字が確かめられる8つの店を横に並べて、何が効いたのかを比べます。
小さな店の集客とは
小さな店の集客とは、限られたお金と人手で、店を知ってもらい(認知)、来てもらい(来店)、また来てもらう(再来店)までの流れをつくることです。大きな広告を打てない分、SNS・地域の人とのつながり・体験の場・予約の仕組みなど、自分で続けられる手を組み合わせることになります。
8つの店で何が効いたか
| 店 | 業種・場所 | 主な集客の手 | 結果 |
|---|---|---|---|
| f. | パン屋・新潟県燕市 | 営業日の2日前にInstagramで品ぞろえを告知し、前日まで予約 | 来店客の約9割がネットの情報がきっかけ |
| kenohi | 喫茶食堂・東京 | 営業日は必ずInstagramに投稿。有料広告は使わない | 来店の61%が2回目以降。フォロワー0から1,400人超 |
| Yamanaka Terrace | カフェ・山梨県山中湖村 | 毎月のイベント、地元約15者との共同マルシェ、SNSでの発信 | フォロワー約5,000人。休日は計画を超える来客 |
| ポケット美術教室 | 子どもの美術教室・東京都品川区 | 親子向けワークショップから体験授業へ | 15人で開講 |
| SAY | 大人のバレエ教室・大阪市 | 会場の植物園がホームページとチラシで宣伝に協力 | 定員15人のクラス2つが満員 |
| 美染 | 白髪染め専門の美容室・鳥取市 | チラシと市民ペーパーの広告。のちにGoogleマップ登録・SNS | 開店時は予約でいっぱい。約7割が当日予約 |
| HAA for bath | 入浴剤・大分県別府市 | クラファンでチャネルごとの流入目標を立ててSNS発信 | 341万円(目標の7倍弱) |
| スナック水中 | スナック・東京都国立市 | 閉店する老舗を引き継ぐ思いをクラファンで発信 | 349人から約390万円 |
並べてみると、効いた手は大きくSNS、地域と組む、体験と予約、クラウドファンディングの4つに分かれます。そして、どの店も最後は「もう一度来てもらう」ことに力を入れています。
SNS:投稿を「行く日を決める材料」にする
SNSが来店につながった店は、投稿をお客さんが行く日を決める材料にしています。
f.は水曜と土曜だけ営業するパン屋です。営業日の2日前に、その日に並べる予定のパンをInstagramで紹介し、前日まで予約を受けます。店主は予約の動きから当日の売れ行きを読み、種類ごとに予約が3〜5割になるように焼くことで、廃棄を出さずに済んでいます。開店した時からこの告知を続け、Instagramを見て遠くから来る人が増えました。隣の新潟市から車で30分以上かけて来る人もいるそうです。
kenohiの店主がやったのは、営業日に必ず投稿することだけだったと書いています。ハッシュタグは「カフェ」のように見られやすいだけの言葉ではなく、「武蔵小山カフェ」など実際に来てもらいやすい人に届きそうな言葉を選びました。Instagramのフォロワーは0から始めて1,400人を超えています。
地域と組む:人を呼んでくれる相手を見つける
地域と組んだ店は、自分の店だけでは届かない人に、相手の力を借りて知ってもらっています。
Yamanaka Terraceは、2024年4月の開店後、想定以上に集客に苦労し、来客数は計画の半分程度にとどまりました。そこで毎月イベントを開き、その様子をSNSで発信し続けた結果、フォロワーは5,000人ほどになり、SNSの投稿をきっかけに来るお客さんも少なくないそうです。開店前の2023年からは地域の企業が集まるイベントに出店し、2025年9月には富士山麓の飲食店や雑貨店など約15者と共同でマルシェを開きました。単独のイベントより品ぞろえが充実し、テラスの椅子が埋まるほど人が来たといいます。
大阪の大人向けバレエ教室SAYは、最初の教室を大阪市が運営する植物園のイベントホールで開きました。植物園がホームページやチラシで宣伝に協力してくれたおかげで、広告費を抑えながら定員15人のクラス2つをいっぱいにできました。その後も、運営者が地域の住民に周知してくれる会場を中心に教室を増やしています。
kenohiも、店の壁をギャラリーとして貸し出したことが、新しいお客さんに知ってもらうきっかけになったと振り返っています。
体験と予約:来る理由と来る日をつくる
教室やサロンのように「試してみないとわからない」業態では、体験の場が入会や来店の入口になります。
ポケット美術教室は、東京都品川区を中心に親子向けのイベントでナップサックやうちわをつくるワークショップを開き、参加者に声をかけて2020年2月から教室での体験授業を始めました。翌3月に15人の子どもと正式に開講しています。代表は「広告やチラシで宣伝するよりも体験してもらうほうが入会につながりやすかった」と話しています。予約はLINEを使ったシステムにして、空き状況の確認から予約までを一度で済ませています。
美染は、開店時にチラシと市民ペーパーの広告で予約がいっぱいになりました。いまはお客の約7割が当日予約で、仕事の合間に来る人も多いそうです。気軽に予約できることそのものが、来店の理由になっています。
クラウドファンディング:始まる前からお客さんを集める
クラウドファンディング(インターネットで支援を募る仕組み)は、お金を集めるだけでなく、開店や発売の前から応援してくれる人を集める場になります。
HAA for bathは2021年11月にクラウドファンディングで先行販売を始めました。知人以外にも見てもらう必要があると考え、チャネルごとの流入人数の目標を立ててSNSで発信し、目標の7倍弱にあたる341万円を集めています。ただし、発売後にSNSの口コミやネットの記事で認知が広がっても、1期目は赤字でした。2期目に売上が10倍になったのは、全国放送の情報番組で取り上げられたことが大きかったと代表は話しています。
スナック水中は、20年以上続いたスナックを引き継ぐにあたり、若い人や初めての人でも入れる新しいスナックの形をつくりたいという思いを伝え、349人から約390万円を集めました。
リピーターづくり:2回目に来てもらう
小さな店の売上を安定させるのは、2回目以降に来てくれるお客さんです。
kenohiの1年目は、新規39%・既存(2回目以降)61%でした。店主は、新規ばかりでは流行り廃りで不安定になり、逆に既存が100%近くになると、引っ越しなどで少数の常連が来られなくなったときに崩れやすいと書いています。既存のお客さんにリピートしてもらいながら、新規も一定数増え続ける状態が理想だという考えです。
| 店 | もう一度来てもらうための工夫 |
|---|---|
| kenohi | お菓子や定食の総菜を固定せず、毎回少し変える。流行りに合わせたり広告を出したりせず、リピーターを少しずつ増やす |
| f. | 接客は自分でやると決め、お客さんの好みに合うパンや食べ方を話す。月1回のポップアップ販売会にも常連がついている |
| ポケット美術教室 | 作品づくりで見えた子どもの成長を毎回保護者に伝える。1年間の作品をポートフォリオ(作品集)にまとめる |
| Yamanaka Terrace | 原則年中無休にして、近所の人に「いつでも開いている」安心感を持ってもらう |
| 美染 | 競合が増えたあと、売りを「オーガニックのカラー剤」と「オートシャンプー」に切り替え、チラシと接客で伝える |
美染の代表は、リピーターの獲得は非常に難しく、新しいコンセプトが浸透するまでに1年ほどかかったと話しています。後から似た店が7店舗ほどできたため、ほかの店がまだ持っていない強みを前に出しました。
気をつけたいこと:頼んだ投稿は広告とわかるように
2023年(令和5年)10月1日から、広告であることを隠したステルスマーケティングは景品表示法違反になりました(消費者庁)。お店が頼んで書いてもらったSNS投稿や紹介は、広告であることがわかるようにしておく必要があります。
Googleマップの口コミでも、割引や無料の商品と引き換えに投稿を頼むことは禁止されています。地図での見つけてもらい方はGoogleマップで小さな店を見つけてもらう方法にまとめました。
よくある質問
小さな店は広告を出さないと集客できませんか?
喫茶食堂kenohiは有料広告を使わず、開業1年目の来店の61%が2回目以降のお客さんでした。店主は、近所の人やInstagramの毎日の投稿が主な入口だったと推測しています。
SNSには何を投稿すればいいですか?
新潟県燕市のf.は、営業日の2日前にその日に並べるパンをInstagramで紹介し、前日まで予約を受けています。来店客の約9割がネットの情報をきっかけに来ています。
教室の生徒はどう集めればいいですか?
品川区のポケット美術教室は、親子向けワークショップと体験授業から始めて15人で開講しました。広告やチラシより、体験してもらうほうが入会につながりやすかったそうです。
クラウドファンディングは集客にも使えますか?
HAA for bathはチャネルごとの流入人数の目標を立ててSNSで発信し、目標の7倍弱の341万円を集めました。開店や発売の前から応援してくれる人を集める場にもなります。
お客さんに頼んだSNS投稿や口コミに注意点はありますか?
2023年10月1日から、広告であることを隠したステルスマーケティングは景品表示法違反です。Googleの口コミでも、見返りと引き換えに投稿を頼むことは禁止されています。
出典
- 日本政策金融公庫『調査月報』2026年2月号 No.209「未来を拓く起業家たち」(f.)(2026年2月)
- kenohi店主のnote(開業1年の収支と流入経路)(2020年4月21日公開)
- 日本政策金融公庫『調査月報』2026年8月号 No.215「未来を拓く起業家たち」(Yamanaka Terrace)(2026年8月)
- 日本政策金融公庫『調査月報』2021年1月号 No.148「未来を拓く起業家たち」(ポケット美術教室)(2021年1月)
- 日本政策金融公庫『調査月報』2019年9月号 No.132「未来を拓く起業家たち」(エイジレスバレエ・ストレッチ)(2019年9月)
- 日本政策金融公庫『調査月報』2023年1月号 No.172「未来を拓く起業家たち」(美染)(2023年1月)
- 日本政策金融公庫『調査月報』2025年12月号 No.207「未来を拓く起業家たち」(HAA for bath)(2025年12月)
- 日本政策金融公庫「story 全国創業事例集」スナック水中(2026年10月26日閲覧)
- 消費者庁「令和5年10月1日からステルスマーケティングは景品表示法違反となります。」(2026年10月26日閲覧)
数字は出典の時点のものです。誤りや古くなった数字を見つけたらこちらからお知らせください。

監修:前田晃介
FP・宅建。まがりDEバナナ(ピーク時108店舗)、癒し〜ぷ(約40店舗)の本部を立ち上げ、そば屋・うなぎ屋を経営。詳しく
公開 2026年10月26日
前田晃介が事業をゼロからつくる1年を、数字ごと見る。
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