
2026/10/27
脱サラして独立開業するには|会社を辞める前に確かめるお金と手続き、開業者の7割は元正社員
脱サラして独立開業する人は多く、公庫の2025年度調査では開業直前に正社員(管理職)だった人が41.1%で最多でした。会社を辞める前に確かめたい健康保険の任意継続(退職翌日から20日以内)、国民年金、雇用保険の特例を公的機関の案内から整理します。
- A開業直前の職業「正社員・正職員(管理職)」
- 41.1%管理職以外の正社員は31.0%(公庫 2025年度新規開業実態調査)
- A直前の勤務先を自らの意思で退職
- 89.0%勤務先都合(倒産・廃業・解雇など)は7.4%
- A勤務経験の平均年数
- 21.1年今の事業に関連する仕事の経験(斯業経験)は平均15.3年
- A事業からの収入に「満足」
- 28.3%仕事のやりがいは84.4%が満足
- A健康保険の任意継続の申出
- 20日以内退職日の翌日から。退職日まで継続して2か月以上の加入が条件(協会けんぽ)
- A雇用保険の受給期間の特例
- 最大3年間事業を行っている期間を受給期間に数えない。2022年7月1日から
脱サラして独立開業する人は珍しくありません。日本政策金融公庫の2025年度新規開業実態調査では、開業直前の職業は「正社員・正職員(管理職)」が41.1%で最も多く、管理職以外の正社員(31.0%)と合わせると7割を超えます(2025年12月公表)。
ただし、会社を辞めた日から、健康保険や年金は自分で切り替えることになります。健康保険の任意継続は退職日の翌日から20日以内に申し出る必要があります。このページでは、公庫の調査で脱サラ開業の実態を確かめたうえで、会社を辞める前に確かめるお金と手続きを順に整理します。
脱サラとは:会社員を辞めて自分の事業を始めること
脱サラとは、会社員(サラリーマン)を辞めて、自分で事業を始めることです。「独立開業」「独立起業」とほぼ同じ意味で使われます。会社から給料をもらう立場から、自分の事業の売上で生活する立場に変わります。
公庫の調査を見ると、脱サラは開業の典型的な形です。開業した人の勤務キャリアは次のとおりでした。
| 項目 | 割合・年数 |
|---|---|
| 開業直前の職業:正社員・正職員(管理職) | 41.1% |
| 開業直前の職業:正社員・正職員(管理職以外) | 31.0% |
| 勤務経験がある | 97.6% |
| 今の事業に関連する仕事の経験(斯業経験)がある | 81.1% |
| 管理職の経験がある | 66.4% |
| 勤務経験の平均年数 | 21.1年 |
| 斯業経験の平均年数 | 15.3年 |
開業した人の多くは、会社で同じ業界の仕事を長く経験してから独立しています。何から始めるかの全体の手順は、起業するには何から始める?で7つに分けてまとめています。
なぜ脱サラするのか:開業の動機と退職の理由
脱サラの多くは、自分で決めた独立です。公庫の調査では、開業直前の勤務先を離れた理由は「自らの意思による退職」が89.0%で、倒産・廃業や解雇など「勤務先都合」は7.4%でした。
開業の動機は次の順でした。
| 開業の動機(複数回答) | 割合 |
|---|---|
| 自由に仕事がしたかった | 59.7% |
| 収入を増やしたかった | 44.9% |
| 仕事の経験・知識や資格を生かしたかった | 41.1% |
独立した後の満足度と収入
開業した人の7割以上は開業に満足しています。公庫の調査では、総合的な満足度は「かなり満足」が31.8%、「やや満足」が43.1%でした。
一方で、項目ごとに見ると差があります。「満足」の割合は、仕事のやりがいが84.4%、ワークライフバランスが54.7%、事業からの収入は28.3%にとどまりました。1週間の労働時間は「50時間以上」が49.8%です。
事業からの収入が本人の定期的な収入のすべて(100%)という人は53.3%でした。開業時の資金調達額は平均1,219万円で、そのうち自己資金は平均279万円、金融機関等からの借り入れは平均827万円です。開業資金の目安は開業資金はいくら必要?、融資の仕組みは日本政策金融公庫の創業融資にまとめています。
会社を辞める前に確かめるお金と手続き
会社員のあいだは、健康保険・年金・雇用保険の手続きを会社がしてくれます。辞めた後は、それを自分でします。期限のあるものを先に整理しました。
| 手続き | 期限・条件 | 出す先 |
|---|---|---|
| 健康保険の任意継続 | 退職日の翌日から20日以内。退職日まで継続して2か月以上の加入が条件 | 住んでいる都道府県の協会けんぽ支部 |
| 国民健康保険に入る(任意継続を選ばない場合) | 市区町村の案内による | 市区町村の国民健康保険の窓口 |
| 国民年金(第1号被保険者)に入る | 事実が発生した日から14日以内(千葉市の案内) | 市区町村の窓口 |
| 雇用保険の受給期間の特例 | 事業を開始した日などの翌日から2か月以内 | 住所を管轄するハローワーク |
| 開業届 | 開業した年分の確定申告期限まで | 税務署 |
健康保険:任意継続・国民健康保険・家族の扶養から選ぶ
会社を辞めた後の健康保険は、任意継続、国民健康保険、家族の健康保険(被扶養者)の3つから選びます。協会けんぽは、毎月納める保険料などを比べて選ぶよう案内しています。
任意継続は、辞めた会社の健康保険にそのまま入り続ける制度です。
- 条件:退職日までに被保険者期間が継続して2か月以上あること。
- 申出:退職日の翌日から20日以内に、「健康保険任意継続被保険者資格取得申出書」を出す(20日目が土日・祝日なら翌営業日。郵送は20日以内に必着)。
- 保険料:会社が負担していた分も自分で払うため、退職時の保険料の2倍になります。ただし上限があります。保険料は原則2年間変わりません。
- 期間:2年間です。
国民健康保険の保険料(税)は、前年の所得や世帯の人数などで決まり、計算の方法は市区町村によって違います。独立した直後は会社員時代の所得が反映されるため、任意継続と国民健康保険のどちらが安いかは、住んでいる市区町村の窓口で金額を出してもらって比べるのが確実です。
国民年金:第1号被保険者への切り替え
会社を辞めて厚生年金から外れたら、国民年金の第1号被保険者になる手続きをします。千葉市の案内では、申請期間は事実が発生した日から14日以内で、窓口は区役所などです。
手続きには、基礎年金番号がわかるものと、退職年月日を証明できるもの(健康保険資格喪失証明書、離職票など)が要ります。配偶者に扶養されていた人(第3号被保険者)がいる場合は、その人も第1号被保険者への手続きが必要です。
雇用保険:起業した人の受給期間の特例
雇用保険の基本手当(いわゆる失業手当)の受給期間は、原則として離職日の翌日から1年以内です。2022年7月1日から、事業を開始した人が事業を行っている期間を、最大3年間受給期間に数えない特例ができました。事業を休廃業した場合でも、その後の再就職活動で基本手当を受け取れる可能性が残ります。
特例の主な要件は次のとおりです(厚生労働省 東京労働局のリーフレット)。
- 事業の実施期間が30日以上であること。
- 事業を開始した日などから30日を経過する日が、受給期間の末日以前であること。
- その事業について、就業手当や再就職手当を受けていないこと。
- 自立できないと認められる事業ではないこと(開業届の写しや登記事項証明書などで、事業の開始と実在を確かめられること)。
- 離職日の翌日以後に始めた事業であること。
申請は、事業を開始した日などの翌日から2か月以内に、住所を管轄するハローワークへ出します。
在職中にできる準備
会社を辞める前でも、進められる準備は多くあります。
- 事業を小さく試す:副業が認められていれば、売れるかどうかを在職中に確かめられます。
- 資金計画を立てる:開業費用と、売上が立つまでの生活費を分けて計算します。
- 届出の準備をする:開業届と、青色申告の承認申請の期限を確かめておきます。書き方は開業届の出し方と期限にまとめました。
- 退職日を決める:健康保険・年金の期限は退職日から数えるので、手続きの日程を先に並べておきます。
会社員から独立した実例としては、食品メーカーの役員を辞めて、閉店したそば屋を引き継いだなごみ奈の事例があります。
よくある質問
脱サラして独立開業する人はどのくらいいますか?
公庫の2025年度調査では、開業直前の職業は正社員(管理職)が41.1%、管理職以外の正社員が31.0%でした。開業者の7割以上が会社員などから独立しています。
会社を辞めたら健康保険はどうなりますか?
任意継続・国民健康保険・家族の健康保険(被扶養者)のどれかに入ります。任意継続は退職日の翌日から20日以内に申し出て、最長2年間入れます。
起業しても失業手当はもらえますか?
事業を始めると原則として受け取れません。ただし申請すれば、事業を行っている期間を最大3年間、受給期間に数えない特例があり、廃業後の再就職活動で受け取れる可能性が残ります。
脱サラの準備は会社を辞める前と後のどちらにしますか?
事業の試し売りや資金計画は在職中に進められます。退職後は健康保険・国民年金の切り替えに期限があるため、退職日から逆算して手続きを並べておきます。
出典
- 日本政策金融公庫 総合研究所「2025年度新規開業実態調査」アンケート結果の概要(2025年12月5日公表・2026年10月27日閲覧)
- 厚生労働省 東京労働局「離職後に事業を開始等した方は雇用保険受給期間の特例を申請できます」(リーフレット)(2026年10月27日閲覧)
- 全国健康保険協会(協会けんぽ)「任意継続」(2026年10月27日閲覧)
- 全国健康保険協会(協会けんぽ)よくあるご質問「退職後の健康保険について」(2026年10月27日閲覧)
- 千葉市 よくあるご質問「国民年金の加入・種別変更の手続きについて知りたいのですが。」(2026年10月27日閲覧)
数字は出典の時点のものです。誤りや古くなった数字を見つけたらこちらからお知らせください。

監修:前田晃介
FP・宅建。まがりDEバナナ(ピーク時108店舗)、癒し〜ぷ(約40店舗)の本部を立ち上げ、そば屋・うなぎ屋を経営。詳しく
公開 2026年10月27日
前田晃介が事業をゼロからつくる1年を、数字ごと見る。
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