
2026/10/28
夫婦で起業・友達と起業するには|共同創業で決めておくことと事業形態の選び方
夫婦で起業するなら、個人事業で配偶者を専従者にする形(白色申告の控除は最高86万円)と、会社をつくる形があります。友達と起業するなら、出資の割合が決め方を左右します。株式会社の特別決議は議決権の3分の2以上、合同会社は社員の過半数。法令と国税庁の案内から整理しました。
- A白色申告の事業専従者控除(配偶者)
- 最高86万円15歳以上のその他の親族は最高50万円(国税庁 No.2075)
- A青色事業専従者給与の届出
- 3月15日まで1月16日以後に開業した場合などは2か月以内(国税庁 No.2075)
- A株式会社の特別決議
- 議決権の3分の2以上出席した株主の議決権のうち。定款で上回る割合も定められる(会社法)
- A合同会社の業務の決定
- 社員の過半数社員が2人以上で定款に別段の定めがない場合(会社法)
- A合同会社の退社の予告
- 6か月前まで事業年度の終了の時に退社できる。定款で別の定めも可(会社法)
- A設立の登録免許税(最低額)
- 株式会社15万円・合同会社6万円資本金の額の1,000分の7が最低額に満たないとき(国税庁 No.7191)
夫婦や友達と起業するときは、誰が事業の持ち主になり、誰が最後に決めるのかを、始める前に形にしておきます。夫婦なら、個人事業で配偶者を専従者にする形があり、白色申告の事業専従者控除は配偶者で最高86万円です(国税庁 No.2075、2026年10月28日閲覧)。友達と会社をつくるなら、株式会社の重要な決議には出席した株主の議決権の3分の2以上が要ります(会社法第309条)。
一緒に始める相手がいると、資金も作業も分けられます。その一方で、決め方とやめ方を決めないまま始めると、意見が割れたときに事業が止まります。このページでは、法令と国税庁の案内から、共同創業の形と、先に決めておくことを整理します。
共同創業とは?2人以上で事業を始める4つの形
共同創業とは、2人以上が出資や労務を持ち寄って、1つの事業を一緒に始めることです。法律上の形は、大きく次の4つに分かれます。
| 形 | 事業の持ち主 | もう1人の立場 | 向いている場面 |
|---|---|---|---|
| 個人事業+専従者 | 1人の個人事業主 | 生計を一にする家族が専従者として働く | 夫婦・親子で小さく始める |
| 個人事業+従業員・外注 | 1人の個人事業主 | 雇用や業務委託の相手 | 友達に手伝ってもらう |
| 民法の組合(共同事業) | 組合員の全員 | 出資して共同の事業を営む当事者 | 期間限定の共同の事業 |
| 会社(株式会社・合同会社) | 会社 | 出資者(株主・社員)や役員 | 2人が対等に関わる、長く続ける |
民法は、組合契約を「各当事者が出資をして共同の事業を営むことを約すること」で効力が生じるとし、出資は労務でもよいとしています(第667条)。損益分配の割合を決めなかったときは、各組合員の出資の価額に応じて決まります(第674条)。
個人事業と会社の違い(税率や設立の手続き)は個人事業主と法人の違いにまとめています。
夫婦で起業する:個人事業で配偶者を専従者にする
夫婦で起業するときにいちばん小さく始められるのは、一方が個人事業主になり、もう一方を事業専従者にする形です。国税庁のタックスアンサー No.2075 によると、扱いは青色申告と白色申告で違います。
| 項目 | 青色申告(青色事業専従者給与) | 白色申告(事業専従者控除) |
|---|---|---|
| 経費にできる額 | 届け出た範囲で、労務の対価として相当な給与 | 配偶者は最高86万円、その他の親族は最高50万円 |
| 対象 | 生計を一にする配偶者その他の親族で、12月31日現在で15歳以上 | 同じ |
| 従事の条件 | その年を通じて6か月を超える期間、専らその事業に従事 | 同じ |
| 手続き | 「青色事業専従者給与に関する届出書」を3月15日まで(1月16日以後の開業などは2か月以内)に税務署へ | 確定申告書に控除を受ける旨と金額を書く |
白色申告の控除額は、配偶者なら86万円と、控除前の事業所得等の金額を事業専従者の数に1を足した数で割った金額の、いずれか低い額です。
注意したいのは扶養との関係です。国税庁は、青色事業専従者として給与の支払を受ける人や白色申告者の事業専従者は、同一生計配偶者や扶養親族にはなれないとしています。専従者にするか、扶養の範囲で手伝ってもらうかは、手取りの合計で比べます。青色申告そのものの条件は青色申告とは?をご覧ください。
友達と起業する:会社の出資と決め方
友達と起業して2人とも事業の持ち主になるなら、会社をつくり、出資の割合と決め方を定款で決めるのが一般的です。株式会社と合同会社では、決め方の初期設定が違います。
| 項目 | 株式会社 | 合同会社 |
|---|---|---|
| 持ち主 | 株主(株式の数で議決権) | 社員(出資した人) |
| ふだんの決め方 | 株主総会の普通決議:出席した株主の議決権の過半数 | 業務は社員の過半数で決定(会社法第590条)。常務は各社員が単独で行える |
| 重要な決め方 | 特別決議:出席した株主の議決権の3分の2以上(会社法第309条) | 定款の変更は総社員の同意(会社法第637条) |
| 利益の分け方 | 株式の数に応じた配当 | 定款に定めがなければ出資の価額に応じる(会社法第622条) |
| 持ち分を人に渡す | 株式を譲渡する(譲渡制限を定款で付けられる) | 他の社員の全員の承諾が必要(会社法第585条) |
| 抜けるとき | 株式を誰かに譲るか、会社が買い取る | 定款に定めがなければ6か月前までに予告し、事業年度の終了の時に退社(会社法第606条) |
| 設立の登録免許税(最低額) | 15万円 | 6万円 |
登録免許税は、どちらも資本金の額の1,000分の7で、それが最低額に満たないときは株式会社15万円、合同会社6万円です(国税庁 No.7191)。
共同創業で先に決めておくこと
共同創業で先に決めておくことは、お金・役割・決め方・やめ方の4つです。話し合った内容は、会社なら定款や株主の間の契約書に、個人事業や組合なら書面の契約にしておきます。
- 出資の割合:誰がいくら出すか。労務を出資とするなら、その評価をどうするか。
- 役割と報酬:誰がどの仕事を担い、報酬をいくらにするか。働く時間が違うときの扱い。
- 決め方:ふだんの判断は誰がするか。意見が割れたら誰が最後に決めるか。
- 利益の分け方:出資の割合どおりに分けるか、働きに応じて変えるか。合同会社や民法の組合では、決めなければ出資の価額に応じて分けることになります。
- 抜けるときの扱い:途中で抜ける人の株式や持分を、誰がいくらで引き取るか。夫婦なら、離婚した場合の事業と財産の扱い。
- やめるときの基準:何か月で、どの数字に届かなければ事業をやめるか。
共同創業の始め方
- 事業の形を決める:個人事業+専従者・従業員、民法の組合、合同会社、株式会社のどれにするかを、税金とやめ方の違いで選びます。
- 4つの決め事を書面にする:お金・役割・決め方・やめ方を話し合い、文書に残します。
- 会社なら定款に入れる:議決権の割合、業務を執行する社員、利益の分け方、持分の譲渡や退社の条件を定款に書きます。
- 税務署に届け出る:個人事業なら開業届と、専従者に給与を払うなら青色事業専従者給与に関する届出書。期限は3月15日まで(1月16日以後の開業などは2か月以内)です。
- 定期的に見直す:役割や働く時間が変わったら、報酬と利益の分け方も見直します。
日本政策金融公庫の「2025年度新規開業実態調査」では、開業時の平均従業者数(経営者本人を含む)は2.8人でした。1人ではなく、家族や仲間と一緒に始める開業は珍しくありません。図鑑でも、夫婦2人で回すボルダリングジムや、古民家を夫婦で改修した1日1組の宿を紹介しています。
よくある質問
夫婦で起業するときの事業形態はどう選べばいいですか?
一方が個人事業主になり、もう一方を専従者や従業員にする形と、会社をつくり2人で出資・役員になる形があります。税金の扱いと、やめるときの手続きの違いで選びます。
妻(夫)を青色事業専従者にすると扶養に入れますか?
入れません。国税庁は、青色事業専従者として給与を受ける人や白色申告者の事業専従者は、同一生計配偶者や扶養親族になれないとしています。
友達と起業するとき、出資は半分ずつがいいですか?
半分ずつだと、株式会社の普通決議(出席株主の議決権の過半数)でどちらも単独では決められません。誰が最後に決めるかを、出資の割合や定款で先に決めておきます。
共同創業者が途中で抜けるときはどうなりますか?
合同会社では、定款に定めがなければ6か月前までに予告し、事業年度の終了の時に退社できます。株式会社では株式の扱いが問題になるので、譲渡や買い取りの決め事を先に作ります。
出典
- 国税庁 タックスアンサー No.2075 青色事業専従者給与と事業専従者控除(2026年10月28日閲覧)
- 国税庁 タックスアンサー No.7191 登録免許税の税額表(2026年10月28日閲覧)
- 会社法(e-Gov法令API)(2026年10月28日閲覧)
- 民法(e-Gov法令API)(2026年10月28日閲覧)
- 日本政策金融公庫 総合研究所「2025年度新規開業実態調査」アンケート結果の概要(2025年12月5日公表・2026年10月28日閲覧)
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監修:前田晃介
FP・宅建。まがりDEバナナ(ピーク時108店舗)、癒し〜ぷ(約40店舗)の本部を立ち上げ、そば屋・うなぎ屋を経営。詳しく
公開 2026年10月28日
前田晃介が事業をゼロからつくる1年を、数字ごと見る。
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