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2026/10/28

公務員から起業する|在職中の兼業の制限と、退職前に準備できること

公務員は在職中、承認や許可なしに自分で事業を営めません。国家公務員は2026年4月から、知識・技能をいかした事業も承認され得るようになりました。年20万円・週8時間の目安、地方公務員の許可、退職前にできる準備を公的資料で整理します。

公務員の兼業と起業の数字(人事院・総務省・国税庁)確かさ A
A自営と判断され得る収入の目安
年間で20万円を超える見込み経費を差し引く前の収入。人事院の自営兼業Q&A(令和7年12月)
A兼業の時間の目安
週8時間又は1箇月30時間勤務日は1日3時間の範囲内。国家公務員の目安
A承認を得ずに自営兼業をした場合
1年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金刑国家公務員法第109条第13号。懲戒処分の対象にもなり得る
A地方公務員の兼業の許可件数
41,587件総務省の令和6年度フォローアップ調査(確定値)
A兼業の許可基準を設定している自治体
64%都道府県と市区町村のうち。前回調査から25ポイント増
A開業届の提出期限
1か月以内事業の開始等の事実があった日から(国税庁)

公務員は在職中、国家公務員なら所轄庁の長等の承認、地方公務員なら任命権者の許可がなければ、自ら事業を営むことはできません(国家公務員法第103条、地方公務員法第38条)。国家公務員は2026年4月から、ハンドメイド品の販売やスポーツ・芸術の教室のような「職員の有する知識・技能をいかした事業」も、承認基準を満たせば承認され得るようになりました(人事院、2026年10月28日閲覧)。

このページでは、在職中に何ができて何ができないか、退職して起業する前に準備できることを、人事院・総務省・国税庁の資料から整理します。

公務員の兼業の決まり:「自営」は承認か許可が要る

公務員の「自営」とは、職員が自己の名義で商業、工業、金融業等を経営することです(人事院Q&A)。法人の名義ではなく個人名で事業を営み、広く消費者などを相手に売買などをする場合が当たります。

区分根拠自分で事業を営むとき
国家公務員国家公務員法第103条承認権者の承認が必要
国家公務員(報酬を得て他の事業・事務に従事)国家公務員法第104条許可が必要
地方公務員地方公務員法第38条第1項任命権者の許可が必要

「自営」に当たるかは、営利目的の有無、継続性・反復性、規模(販売数・売上げ額など)、店舗などの営業設備の有無から個別に判断されます。人事院は規模の目安として、確定申告が必要になる基準にならい、経費を差し引く前の収入が年間で20万円を超える見込みなら「自営」と判断し得るとしています。ただし、独立した実店舗を設けて屋号を掲げるような場合は、収入の見込みにかかわらず「自営」とされることがあります。

国家公務員:2026年4月から承認できる事業が広がった

国家公務員の自営兼業は、これまで不動産等の賃貸、太陽光電気の販売、家業を継承した場合の農業等に限られていました。人事院の見直しで、2026年4月(令和8年4月)から次の2つが加わりました。

事業例(人事院の事業イメージ)
職員の有する知識・技能をいかした事業ハンドメイド品の販売、スポーツや芸術の教室
社会貢献に資する事業地域振興イベントの主催、高齢者対象の買物代行

新しく認められた事業の承認基準は、次のとおりです。

  1. 所得税法第229条に規定する開業届を出して行うこと
  2. 事業計画書等(事業の目的、業務内容、営業日・時間、収入の予定年額など)を作成して行うこと
  3. 職員の官職と事業との間に、特別な利害関係やそのおそれがないこと
  4. 職務の遂行に支障が生じないことが明らかであること
  5. 公務の公正性と信頼性の確保に支障が生じないこと

該当する事業でも、必ず承認されるわけではありません。各府省の承認権者が、事業計画書をもとに個別に判断します。

兼業にあてる時間の目安は、原則として週8時間又は1箇月30時間、勤務日は1日3時間の範囲内です。自営兼業は原則として週休日に行うものとされ、勤務日の勤務時間外は、やむを得ない事業に限られます。

不動産賃貸と太陽光電気の販売は、承認が必要な規模も見直されました。たとえば不動産等の賃貸は、これまで賃料年額500万円以上で承認が必要でしたが、2026年4月から500万〜999万円の部分は承認不要になりました。室数(10室)や床面積(600㎡)の基準もあります。

地方公務員:自治体ごとの許可基準で判断される

地方公務員の兼業は、地方公務員法第38条第1項に基づき、任命権者(知事や市長など)が許可します。総務省は2025年6月の通知で、職員個人のスキルや地域の実情を踏まえた自営兼業も、基本的な原則を満たせば認めることが可能だと示しました。

基本的な原則は次の3つです。

  1. 職務遂行上、能率の低下を来すおそれがないこと
  2. 相反する利害関係を生じるおそれがなく、職務の公正を妨げるおそれがないこと
  3. 職員及び職務の品位を損ねるおそれがないこと

総務省の令和6年度の調査では、地方公務員の兼業の許可件数は41,587件でした。自営兼業として、書道教室の運営やヨガインストラクターとしての活動が許可された例もあります。

項目令和6年度の調査
兼業の許可件数41,587件
うち社会貢献活動に関する許可13,498件
許可基準を設定している自治体1,152団体(全体の64%)
許可基準を周知している自治体1,008団体(全体の56%)

許可の基準と手続きは自治体ごとに違います。まず自分の自治体の基準が公表されているかを確かめ、人事担当に相談しましょう。

退職前に準備できること

在職中は事業を営めなくても、営業にあたらない準備は進められます。退職して起業する人が在職中にできることを、順番に並べます。

  1. 何を事業にするか決める:退職後に始める事業の中身と、最初のお客を決めます。在職中の職務と利害関係のある相手を顧客にしないよう注意します。
  2. 事業計画書をつくる:業務内容、営業日・時間、収入の見込みを書きます。人事院が自営兼業の申請に求める項目と同じで、創業融資の相談にも使えます。
  3. 資金計画を立てる:自己資金、退職後の生活費、開業費用を分けて考えます。創業融資の制度は創業融資の基本にまとめています。
  4. 在職中に兼業で小さく試すか考える:国家公務員なら知識・技能をいかした事業、地方公務員なら自治体の基準の範囲で、承認・許可を得て試す道があります。
  5. 退職後すぐに開業届を出す:個人で事業を始めたら、事業の開始等の事実があった日から1か月以内に、納税地の税務署へ開業届を出します(国税庁)。書き方は開業届の出し方をご覧ください。

起業の形:個人事業か、会社か

退職後の起業は、個人事業として開業届を出して始めるか、会社を設立するかを選びます。在職中に国家公務員が承認を受けて行う自営兼業は、個人の名義で行うものです。地方公務員の場合、任命権者の許可の対象には、自ら営利企業を営むことのほか、営利企業の役員等の地位を兼ねることも含まれます(総務省の通知)。

形始め方在職中との関係
個人事業税務署に開業届を出す国家公務員は承認基準の1つとして開業届の提出が求められる
会社法人を設立する在職中に会社の役員を兼ねることには制限がある(地方公務員は任命権者の許可の対象)

よくある質問

公務員は在職中に起業できますか?

国家公務員は承認、地方公務員は任命権者の許可がなければ、自ら営利企業を営めません。国家公務員は2026年4月から、知識・技能をいかした事業も承認され得るようになりました。

公務員が承認なしで副業の事業をするとどうなりますか?

国家公務員の場合、服務義務違反として懲戒処分の対象になり得るうえ、国家公務員法第109条第13号により1年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金刑に処せられる場合があります。

どのくらいの規模から「自営」になりますか?

人事院のQ&Aでは、経費を引く前の収入が年間で20万円を超える見込みなら、規模の点で「自営」と判断し得るとしています。実店舗や屋号があれば金額によらず自営とされる場合もあります。

退職前にしておける起業の準備は何ですか?

事業計画書づくり、資金計画、物件や取引先の下調べなど、営業にあたらない準備は進められます。開業届は事業を始めた日から1か月以内に税務署へ出します。

出典

  1. 人事院「自営兼業制度の見直しについて(概要)」(令和7年12月・2026年10月28日閲覧)
  2. 人事院職員福祉局「自営兼業制度の見直しに関するQ&A」(令和7年12月・2026年10月28日閲覧)
  3. 総務省「営利企業への従事等に係る任命権者の許可等に関する留意事項について(通知)」総行公第72号(令和7年6月11日・2026年10月28日閲覧)
  4. 国税庁 タックスアンサーNo.2090「新たに事業を始めたときの届出など」(2026年10月28日閲覧)

数字は出典の時点のものです。誤りや古くなった数字を見つけたらこちらからお知らせください。

監修:前田晃介
FP・宅建。まがりDEバナナ(ピーク時108店舗)、癒し〜ぷ(約40店舗)の本部を立ち上げ、そば屋・うなぎ屋を経営。詳しく

公開 2026年10月28日

前田晃介が事業をゼロからつくる1年を、数字ごと見る。

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