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2026/10/27

個人M&Aで会社や店を買う方法|スモールM&Aの価格の決まり方・探し方・費用と実例

個人でも、後継者のいない会社や店を買えます。譲渡価格の目安は「時価純資産額+のれん代」で、のれん代は経常利益または事業所得の1〜3年分程度(日本政策金融公庫)。無料のマッチング、補助金の条件、55万円の貸し会議室など実例の数字をまとめました。

個人M&Aの価格と費用の数字確かさ A・B
A譲渡価格の目安の式
時価純資産額+のれん代日本政策金融公庫「ゆずるノート」。簡易な方法で実際の価格と大きく異なることがある
Aのれん代の目安
1〜3年分程度経常利益または事業所得の。業種や成長性で異なる
A公庫の算出例の譲渡価格
500万円時価純資産額300万円+のれん代200万円(経常利益100万円×2年分)
A公庫の事業承継マッチング支援の利用料
無料事業を営んでいない個人も、事業を受け継いで創業する目的で利用できる
A事業承継・M&A補助金(専門家活用枠)買い手の補助上限
600万円16次公募。補助率は2/3以内。個人事業主は開業届などの提出から5年が経過していることが条件
B会社員が副業で買った女性専用サロン
200万円埼玉。51歳の会社員が本業を続けながら遠隔で経営

個人でも、後継者のいない会社や店をM&A(合併・買収)で買って経営を引き継ぐことができます。日本政策金融公庫(以下、公庫)の冊子では、譲渡価格の目安を「時価純資産額+のれん代」とし、のれん代を経常利益または事業所得の1〜3年分程度としています(2026年10月27日閲覧)。

実際の個人M&Aでは、貸し会議室を55万円、女性専用サロンを200万円で買った例が公開されています。このページでは、公庫の資料と事業承継・M&A補助金の公募要領、買い手本人のインタビューから、価格の決まり方・探し方・かかる費用を整理します。

個人M&Aとは:個人が会社や店を買って経営を引き継ぐこと

個人M&Aとは、会社員や個人事業主などの個人が、ほかの人の会社や事業を買って経営を引き継ぐことです。こうした小さな会社や店の売買は、スモールM&Aとも呼ばれます。

ゼロから事業をつくる起業と比べると、すでに客や取引先、設備がある状態から始められるのが特徴です。埼玉の女性専用サロンを買った51歳の会社員は、ある程度基盤がある事業を引き継いだ方がスムーズで、初期の資金的なリスクも少なくて済むと考えて、「事業を創る」のではなく「事業を引き継ぐ」M&Aを選んだと話しています。

実例買い手買ったもの価格
女性専用サロン(埼玉)51歳の会社員(副業)店舗の事業(事業譲渡)200万円
貸し会議室(3店舗)中小企業診断士の会社1店舗ずつ1店舗目60万円、2・3店舗目55万円
ネットショップ(4件)ほぼ1人で事業をしてきた会社の社長株式譲渡・事業譲渡約2年半で総額8,250万円

株式譲渡と事業譲渡:何を買うかで引き継ぐものが違う

小さなM&Aの主な方法は、株式譲渡と事業譲渡の2つです。公庫の「ゆずるノート」の説明を整理すると、次のとおりです。

方法何を買うか引き継ぐもの注意点
株式譲渡経営者などが持つ会社の株式会社ごと。取引先との関係、従業員の雇用、許認可も維持できる借入などの負債も引き継ぐ。簿外債務を引き継ぐおそれがある
事業譲渡事業の全部または一部個別の資産や契約ごとに移す手続きが煩雑。許認可は引き継げない

個人事業を引き継ぐときや、会社の一部の事業だけを買うときは事業譲渡になります。飲食店や美容室のように営業許可や届出が要る業種を事業譲渡で買うなら、許可は買い手が取り直すと考えておきます。

スモールM&Aの価格の決まり方:時価純資産額+のれん代

小さな会社の譲渡価格は、会社の正味の財産(時価純資産額)に、稼ぐ力の分(のれん代)を足した金額が目安になります。公庫の「ゆずるノート」は、株式譲渡の場合の簡易な試算として、次の例を示しています。

段階中身金額
純資産(簿価)資産1,000万円−負債800万円200万円
時価で見直す売掛金の回収不能額▲100万円、土地の含み益+100万円、保険の解約返戻金+200万円、簿外債務(未払い残業代など)▲100万円時価純資産額300万円
のれん代経常利益100万円×2年分200万円
譲渡価格の目安300万円+200万円500万円

のれん代は、業種や成長性などによって異なりますが、経常利益または事業所得の1〜3年分程度を計上する場合がある、としています。ただし冊子は、これは簡易な方法で、実際の譲渡価格と大きく異なる可能性があると注意しています。純資産がマイナス(債務超過)でも、譲渡ができないわけではありません。

実例:買い手は価格をどう判断したか

公開されている個人M&Aの実例では、買い手が自分で回収できる価格かどうかを先に決めています。

貸し会議室を買った中小企業診断士は、1店舗目を60万円、2店舗目と3店舗目を55万円で買いました。それぐらい安く引き継がないと、初期投資を回収するのに時間がかかりすぎるからだと話しています。150万円ぐらいで売りに出ている案件も多いものの、自分で算定した価値とは乖離が大きいことがほとんどで、80万円ぐらいの物件は修繕費を考えると合わないと判断して、値段が下がるのを待つそうです。

ネットショップを4件買った社長は、着物のネットショップを、売り手の希望価格3,500万円から在庫相当の2,200万円まで交渉して買いました。一方で、売却希望価格110万円ほどで安いと思って買った雑貨・文具の店は、売上にあまり貢献できていないと振り返り、「売りに出ているものには、それなりの理由がある」と話しています。

個人M&Aの案件の探し方

個人が買える案件は、公的な窓口と民間のマッチングサイトで探せます。

  1. 公庫の事業承継マッチング支援:事業を譲りたい人と譲り受けたい人をつなぐ無料のサービスです。法人だけでなく個人企業や、事業を営んでいない個人も、事業を受け継いで創業する目的で利用できます。公庫は相手の紹介と情報提供だけを行い、仲介はしません。紹介までに数か月から年単位かかることもあります。
  2. 事業承継・引継ぎ支援センター:国が各都道府県に置く相談窓口です。
  3. 民間のマッチングサイト:上の3つの実例は、いずれも民間のM&Aマッチングサイトで相手を見つけています。サロンの買い手は、登録から半年くらいは案件を眺めているだけだったものの、まず気になった案件に申し込むことから始めたそうです。

公的な窓口の実績と、買う前に確かめる項目は事業承継で小さな店や会社を引き継ぐ方法に詳しくまとめています。

譲渡価格のほかにかかる費用と補助金

個人M&Aでは、譲渡価格のほかに、専門家への報酬と、引き継いだあとの毎月の出費がかかります。

仲介業者やFA(買い手か売り手の一方を支援する助言者)に頼む場合の費用は、国の「事業承継・M&A補助金」の専門家活用枠で一部が補助されます。16次公募の買い手支援類型は、補助上限額600万円、補助率は補助対象経費の2/3以内です。受付期間は2026年10月2日から11月6日17時までです。

条件(16次公募)内容
補助の対象になる専門家国の「M&A支援機関登録制度」に登録した専門家への委託費だけ
契約の時期仲介・FAとの委託契約は交付決定日以降に結ぶ
個人事業主の条件開業届と青色申告承認申請書の提出から5年が経過していること
法人の条件設立登記と3期分の決算・申告が終わっていること

つまり、事業をしていない会社員が個人で買う場合や、開業して間もない個人事業主は、この補助金の対象外です。先に専門家と契約してしまうと補助の対象にならない点にも注意が要ります。

引き継いだあとの出費も見落としやすい点です。サロンを遠隔で経営する会社員は、現地への交通費が往復で数万円かかるうえ、社会保険労務士や税理士への委託料、社会保険料の会社負担分など、会社員時代には意識していなかった「見えない出費」が毎月発生すると話しています。譲渡資金とは別に、余裕資金を手元に準備しておくよう勧めています。

よくある質問

個人でも会社や店をM&Aで買えますか?

買えます。日本政策金融公庫の事業承継マッチング支援は、事業を営んでいない個人も、事業を受け継いで創業する目的で無料で利用できます。会社員が副業で買った例もあります。

スモールM&Aの価格はどう決まりますか?

公庫の冊子では、時価純資産額にのれん代を足した金額を目安にしています。のれん代は経常利益または事業所得の1〜3年分程度です。最後は当事者の交渉で決まります。

株式譲渡と事業譲渡はどう違いますか?

株式譲渡は会社ごと買う方法で、借入などの負債や許認可も引き継ぎます。事業譲渡は事業の全部か一部を買う方法で、個人事業を引き継ぐときに使い、許認可は引き継げません。

個人M&Aで補助金は使えますか?

事業承継・M&A補助金の専門家活用枠は、仲介やFAの費用を補助します。ただし個人事業主は開業届などの提出から5年が経過していることが条件で、事業をしていない個人は対象外です。

出典

  1. 日本政策金融公庫「ゆずるノート」(第三者への事業承継を検討するための冊子)(令和4年4月発行・2026年10月27日閲覧)
  2. 日本政策金融公庫「事業承継マッチング支援」(2026年10月27日閲覧)
  3. 日本政策金融公庫「事業承継マッチング支援」Q&A(2026年10月27日閲覧)
  4. 事業承継・M&A補助金 専門家活用枠 16次公募 案内パンフレット(2026年9月4日公募要領公開・2026年10月27日閲覧)
  5. 事業承継・M&A補助金 専門家活用枠 16次公募 公募要領(2026年10月27日閲覧)
  6. TRANBI 成約インタビュー(EC事業4件の連続買収)(2026年10月27日閲覧)
  7. TRANBI 成約インタビュー(レンタルスペースの買収)(2026年10月27日閲覧)
  8. TRANBI 成約インタビュー(200万円で埼玉の女性専用サロンを承継)(2026年10月27日閲覧)

数字は出典の時点のものです。誤りや古くなった数字を見つけたらこちらからお知らせください。

監修:前田晃介
FP・宅建。まがりDEバナナ(ピーク時108店舗)、癒し〜ぷ(約40店舗)の本部を立ち上げ、そば屋・うなぎ屋を経営。詳しく

公開 2026年10月27日

前田晃介が事業をゼロからつくる1年を、数字ごと見る。

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