
2026/10/28
クリニック開業の流れと届出|診療所の開設届・保険医療機関の指定と開業資金の考え方
医師個人がクリニック(診療所)を開業するときは、開設した日から10日以内に保健所へ診療所開設届を出し、厚生局で保険医療機関の指定を受けます。指定は原則として申請の翌月1日付けです。令和8年4月からの外来医師過多区域の事前届出、個人の無床診療所の収支(1施設当たり医業収益90,142千円)も公的資料で整理しました。
- A診療所開設届の期限(医師個人が開設)
- 開設した日から10日以内医療法第8条。届出先は保健所(東京都多摩小平保健所の案内)
- A保険医療機関の指定日
- 申請した翌月1日原則。地方社会保険医療協議会の部会が月1回開かれるため(近畿厚生局)
- A全国の一般診療所の数
- 105,207施設令和6年10月1日現在。前年より313施設増加(厚生労働省 医療施設調査)
- A個人が開設する一般診療所
- 38,719施設一般診療所総数の36.8%。最も多いのは医療法人の47,711施設(45.3%)
- A外来医師過多区域での事前届出
- 開設6ヶ月前まで令和8年4月1日から。無床診療所を新たに開設し保険医療機関の指定を受ける場合(関東信越厚生局)
医師個人がクリニック(診療所)を開業するときは、開設した日から10日以内に、医療法第8条に基づく診療所開設届を保健所へ出し、そのうえで厚生局に保険医療機関の指定を申請します(東京都多摩小平保健所・関東信越厚生局、2026年10月28日閲覧)。保険医療機関の指定日は、原則として申請した翌月1日です(近畿厚生局)。
全国の一般診療所は令和6年10月1日現在で105,207施設あり、令和6年の1年間(前年10月〜9月)に7,035施設が開設し、6,501施設が廃止しました(厚生労働省「医療施設調査」)。ここでは、保健所・厚生局・厚生労働省の公的資料から、クリニック開業の流れ、届出、お金の考え方を整理します。
| 項目 | 数字・中身 | 出典 |
|---|---|---|
| 診療所開設届(医師個人) | 開設した日から10日以内 | 東京都多摩小平保健所 |
| 保険医療機関の指定日 | 原則、申請した翌月1日 | 近畿厚生局 |
| 一般診療所の数 | 105,207施設(令和6年10月1日) | 厚生労働省 |
| 1年間の開設・廃止 | 開設7,035施設・廃止6,501施設(令和6年) | 厚生労働省 |
| 個人の無床診療所の医業収益 | 90,142千円(1施設当たり) | 医療経済実態調査 |
クリニック(診療所)とは
クリニックとは、法律上の一般診療所のことで、医師が医業を行う場所のうち、患者の入院施設がないか、19人以下の入院施設を持つものを指します(厚生労働省「医療施設調査」の用語の説明)。患者20人以上の入院施設を持つものは病院です。
厚生労働省の「令和6年医療施設調査」によると、一般診療所105,207施設のうち、入院設備のない「無床」が99,792施設(94.9%)、「有床」が5,415施設(5.1%)です。開設者別では「医療法人」が47,711施設(45.3%)と最も多く、次いで「個人」が38,719施設(36.8%)でした。
| 開業の形 | 開設前の手続き | 開設後の届出 |
|---|---|---|
| 医師個人が開設 | 保健所への事前相談 | 開設した日から10日以内に診療所開設届(医療法第8条) |
| 医療法人などが開設 | 診療所開設許可(医療法第7条第1項) | 実際に開設した日から10日以内に開設届 |
| 入院設備あり(有床) | 病床設置の事前相談 | 工事後に診療所使用許可(医療法第27条)を受けてから入院設備を使う |
クリニック開業までの流れ
クリニック開業の手続きは、保健所への事前相談→開設→開設届→保険医療機関の指定申請→指定の順に進みます。
- 保健所に事前相談する:新規開設を予定している人は、予約したうえで診療所の図面を持って来所し、事前相談を受けるよう東京都多摩小平保健所は求めています。
- 外来医師過多区域かどうかを確かめる:令和8年4月1日から、都道府県知事が指定する外来医師過多区域で無床診療所を新たに開設し、保険医療機関の指定を受ける人は、開設6ヶ月前までに都道府県へ事前届出を出すことになりました(関東信越厚生局)。
- 診療所を開設し、開設届を出す:医師個人なら開設した日から10日以内です。申請様式と添付書類は正・副2部が要り、管理者と医療従事者の免許証の原本確認があります。
- エックス線装置の届出:診療用エックス線装置を置くなら、別に診療用エックス線装置備付届を出します。
- 保険医療機関の指定を申請する:所在地の都県を管轄する厚生局の事務所に申請します。添付書類には開設届(副本)、保険医の氏名と登録番号、診療時間などがあります。
- 指定を受ける:地方社会保険医療協議会への諮問を経て「指定通知書」が届きます。
保険医療機関の指定は「翌月1日」
保険診療を始めるには、保険医療機関の指定が要ります。近畿厚生局によると、新規指定の指定日は原則として指定申請をした翌月1日です。指定の際には地方社会保険医療協議会の部会に諮問し、その部会が月1回開かれるためです。申請者からの申し出があれば、翌月1日以降の希望日を指定日にすることもできます。
毎月の申込締切日は、厚生局の事務所ごとに決まっています(関東信越厚生局)。開設届の副本を添えて申請するので、開設日・開設届・指定申請の締切・指定日の4つを並べて逆算するのが実務の要点です。
| 日付 | やること |
|---|---|
| 開設6ヶ月前まで | (外来医師過多区域のみ)都道府県へ事前届出 |
| 開設前 | 保健所に図面を持って事前相談 |
| 開設日から10日以内 | 保健所へ診療所開設届 |
| 厚生局事務所の締切日まで | 保険医療機関の指定申請(開設届の副本を添付) |
| 原則として申請の翌月1日 | 保険医療機関の指定 |
クリニックの収支:医療経済実態調査で見る
クリニックの収支は、厚生労働省と中央社会保険医療協議会の医療経済実態調査で公表されています。第25回調査(令和7年実施)の、開設者が個人で入院診療収益がない一般診療所(471施設)の1施設当たりの数字は次のとおりです。
| 項目(1施設当たり) | 前々年(度) | 前年(度) |
|---|---|---|
| 医業収益 | 92,986千円 | 90,142千円 |
| 給与費 | 24,806千円 | 25,711千円 |
| 損益差額 | 30,640千円 | 26,340千円 |
前年(度)は、令和7年3月末までに終わった直近の事業年(度)です。損益差額の医業・介護収益に対する割合は、前年(度)で29.1%でした。
開業資金の考え方
クリニックの開業資金をまとめた公的な統計は見当たりません。内装工事、医療機器、電子カルテ、開業後の運転資金は、診療科・広さ・検査機器の有無で大きく変わります。
参考になる公的な数字は、開業全体の調査です。日本政策金融公庫の「2025年度新規開業実態調査」では、開業した人の業種は「サービス業」27.7%に次いで「医療・福祉」が16.7%を占めています。開業費用全体の平均や中央値は開業資金はいくら必要?で、公庫の融資の仕組みは日本政策金融公庫の創業融資で整理しています。
資金計画をつくるときは、次の順で考えると漏れが少なくなります。
- 物件と内装:保健所の事前相談で図面を見てもらってから契約・工事に進みます。
- 医療機器:エックス線装置を置くなら、備付届も手続きに入れます。
- 指定日までの空白:保険医療機関の指定は原則として申請の翌月1日なので、開設から保険診療の収入が入るまでの期間を運転資金に含めます。
- 人件費:医療経済実態調査では、個人の無床診療所の給与費は1施設当たり25,711千円(前年度)でした。開院前の採用と研修の期間の人件費も見込みます。
よくある質問
クリニックを開業するときの届出は何ですか?
医師個人が開設する場合、開設した日から10日以内に保健所へ診療所開設届を出します(医療法第8条)。医療法人が開設する場合は、事前に診療所開設許可を受けてから開設届を出します。
保険診療はいつから始められますか?
厚生局で保険医療機関の指定を受けてからです。指定日は原則として申請した翌月1日で、申請には開設届の副本を添えます。申請の締切日は厚生局の事務所ごとに決まっています。
クリニックの開業資金はいくらですか?
診療所の開業資金をまとめた公的な統計は見当たりません。内装・医療機器・運転資金は診療科と規模で大きく変わるため、見積もりを集めて資金計画をつくり、金融機関に相談します。
開業医の収入はどれくらいですか?
第25回医療経済実態調査では、個人の無床診療所の1施設当たり医業収益は90,142千円、損益差額は26,340千円でした。損益差額には開設者の報酬に当たる部分が含まれます。
出典
- 東京都多摩小平保健所「診療所・歯科診療所の手続き」(2019年9月10日更新・2026年10月28日閲覧)
- 近畿厚生局「指定日について」(2026年10月28日閲覧)
- 関東信越厚生局「保険医療機関・保険薬局の指定申請手続きの流れ及び添付書類等」(2026年10月28日閲覧)
- 厚生労働省「令和6(2024)年 医療施設(静態・動態)調査・病院報告の概況」(令和7年9月26日公表・2026年10月28日閲覧)
- 中央社会保険医療協議会「第25回医療経済実態調査(医療機関等調査)報告」(令和7年11月・2026年10月28日閲覧)
- 日本政策金融公庫 総合研究所「2025年度新規開業実態調査」アンケート結果の概要(2025年12月5日公表・2026年10月28日閲覧)
数字は出典の時点のものです。誤りや古くなった数字を見つけたらこちらからお知らせください。

監修:前田晃介
FP・宅建。まがりDEバナナ(ピーク時108店舗)、癒し〜ぷ(約40店舗)の本部を立ち上げ、そば屋・うなぎ屋を経営。詳しく
公開 2026年10月28日
前田晃介が事業をゼロからつくる1年を、数字ごと見る。
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