画像はイメージです(AIで作成)

2026/10/27

パン屋の年収と儲け|パン職人の給料と個人店の利益を公庫の経営指標と実例で

パンを焼いて売る店(パン製造小売)の従業者1人当たり人件費は、日本政策金融公庫の経営指標で年平均2,456千円(約246万円)。売上高経常利益率の平均はマイナスでした。パン職人の給料の目安と、個人店の店主の収入を実例から整理しました。

パン屋の年収を考えるための数字確かさ A・C
Cパン製造小売の従業者1人当たり人件費(年)
約246万円公庫「小企業の経営指標調査」の平均2,456千円を換算。パート・アルバイトを含む
A開業者のうち事業からの収入に満足
28.3%全業種。「かなり満足」と「やや満足」の合計(公庫 2025年度)
A事業からの収入が本人の収入のすべて
53.3%全業種の開業者(公庫 2025年度)
A1人で営むベーカリーが並べるパン
200個以上f.(新潟県燕市)。営業は水曜と土曜だけ
A大きなサワー種のパンの価格
1,400円トランテトロワ(福岡市)の看板商品「ブラン」
A開業費用の中央値
600万円全業種(公庫 2025年度新規開業実態調査)。平均は975万円

パンを焼いてその場で売る店(パン製造小売)の従業者1人当たり人件費は、年平均2,456千円です(日本政策金融公庫「小企業の経営指標調査」、2026年10月27日閲覧)。パートやアルバイトも含む平均で、万円に直すと約246万円になります。

同じ調査で、パン製造小売の売上高経常利益率の平均はマイナス3.7%でした。粗利は5割を超えるものの、人件費が重く、利益が残りにくい業種です。このページでは、パン職人として雇われる場合と、自分の店を持つ場合に分けて、年収の考え方を公的な調査と実例から整理します。

パン屋の年収とは:雇われるか、店を持つかで意味が違う

パン屋の年収とは、勤めるパン職人なら店から受け取る給料、自分の店を持つ店主なら売上から経費を引いて手元に残るお金のことです。同じ「パン屋の年収」でも、決まり方がまったく違います。

立場年収の決まり方見るべき数字
勤めるパン職人店が払う給料(月給・時給と賞与)1人当たり人件費、求人の賃金
個人で店を持つ店主売上 − 材料費 − 人件費 − 家賃などの経費売上、利益率、営業日数
会社として店を持つ社長自分で決める役員報酬(費用に入る)会社に利益が残るかどうか

店主の場合は、売上が大きくても経費を払ったあとに残る金額が年収になります。開業資金を借りていれば、その返済も残ったお金から払います。

パン職人の給料:1人当たり人件費は年2,456千円

勤めるパン職人の給料の目安として、公庫の「小企業の経営指標調査」(2020年8月掲載の卸売・小売業の資料)にある「パン小売業(製造小売)」の数字を見ます。対象は公庫が融資した従業者50人未満の法人53社です。

指標(平均値)パン小売業(製造小売)
従業者1人当たり売上高6,675千円
従業者1人当たり人件費2,456千円
人件費対売上高比率39.0%
売上高総利益率56.0%
売上高経常利益率−3.7%
1企業当たり店舗面積121.1㎡

従業者1人当たり人件費を万円に直すと、2,456千円=約246万円です(編集部の換算)。これは、正社員だけでなくパート・アルバイトや役員も含めた平均です。短時間で働く人も含む平均なので、フルタイムの正社員の給料とは分けて考える必要があります。職種ごとの正社員の給料は、この調査からはわかりません。

パン屋は儲かるのか:粗利は高いが、利益は薄い

パン屋は、材料費の割合が低い代わりに、人の手で作る時間が長く、人件費が重い商売です。上の表で、売上高総利益率(粗利)は56.0%ありますが、人件費が売上の39.0%を占め、経常利益率の平均はマイナス3.7%でした。

同じ調査で、黒字で自己資本もプラスの企業(53社のうち7社)に限ると、売上高経常利益率の平均は3.0%です。パン屋で利益を出している会社でも、売上の数%が残る程度だということがわかります。

利益を薄くするもう一つの要因が売れ残り(廃棄)です。福岡市のトランテトロワの店主は、業界では売れ残りによる廃棄率は約3パーセントが常識だったと話しています。

個人のパン屋の店主の収入:実例で見る

個人のパン屋の店主がいくら稼いでいるかを示す公的な統計はありません。公庫が取材した2つの店では、収入について次のように語られています。

店場所形収入について
f.新潟県燕市従業者1人。営業は水曜と土曜だけ自分の給料を十分に払えるほどではないが、事業を続けるための最低限の利益は確保している
トランテトロワ福岡市夫婦2人。木曜から日曜の12時から16時だけ営業店を作り直した直後は、収入が以前の5分の1まで減った。その後、売り上げは回復

f.は、約30種類のパンを日替わりで、全部で200個以上並べます。11時の開店からお客さんが途切れず、14時ごろには完売します。営業日以外は製造に充て、予約の動きから当日の売れ行きを読んで、廃棄を出さないようにしています。

トランテトロワは、日持ちするサワー種のパンだけに絞り、パンを大きくして客単価を上げました。看板商品の「ブラン」は1,400円で、お客さんは1度の来店で数週間分をまとめて買います。スーパーなどへの卸と通販で売る範囲も広げています。

公庫の2025年度新規開業実態調査(全業種)でも、開業者のうち「事業からの収入」に満足している人は28.3%でした。仕事のやりがいに満足している人(84.4%)と比べると、収入面の満足は低く出ています。また、事業からの収入が本人の収入のすべてという人は53.3%でした。

パン屋で年収を上げる方法

実例と経営指標から見えるのは、焼く時間と売る時間の使い方で利益が変わるということです。

  1. 営業日を絞って、製造の日を確保する:f.は水曜と土曜、トランテトロワは週4日・4時間だけ店を開けています。
  2. 予約や事前告知で、焼く量を決める:f.は営業日の二日前にラインアップを紹介し、前日まで予約を受けています。
  3. 日持ちするパンで、客単価と販路を広げる:トランテトロワは大きなサワー種のパンで客単価を上げ、卸と通販で全国に売っています。
  4. 店舗以外の売り場を持つ:f.は月に1回、新潟市内の大型複合施設のポップアップ販売会に出ています。

パン屋の開業費用や始め方はパン屋の始め方と開業資金にまとめています。公庫の調査では、全業種の開業費用の中央値は600万円でした。

よくある質問

パン職人の年収はどれくらいですか?

公庫の経営指標では、パン製造小売の従業者1人当たり人件費は年平均2,456千円でした。パートも含む平均で、正社員の給料そのものではありません。

パン屋は儲かりますか?

公庫の経営指標でパン製造小売の売上高経常利益率は平均−3.7%でした。黒字かつ自己資本がプラスの企業に限ると平均3.0%で、利益は薄い業種です。

個人のパン屋の店主の年収はいくらですか?

統計はありません。新潟県燕市のf.の店主は、自分の給料を十分に払えるほどではないが、事業を続けるための最低限の利益は確保していると話しています。

パン屋の利益を上げるには何をすればいいですか?

実例では、営業日を絞って製造に時間を充てる、予約で焼く量を決めて廃棄を減らす、日持ちするパンで客単価と販路を広げる、といった方法がとられています。

出典

  1. 日本政策金融公庫「小企業の経営指標調査」業種別経営指標(卸売・小売業)(2020年8月掲載・2026年10月27日閲覧)
  2. 日本政策金融公庫『調査月報』2026年2月号「未来を拓く起業家たち」f.(2026年2月発行・2026年10月27日閲覧)
  3. 日本政策金融公庫『調査月報』2023年11月号「経営最前線」トランテトロワ(2023年11月発行・2026年10月27日閲覧)
  4. 日本政策金融公庫 総合研究所「2025年度新規開業実態調査」アンケート結果の概要(2025年12月5日公表・2026年10月27日閲覧)

数字は出典の時点のものです。誤りや古くなった数字を見つけたらこちらからお知らせください。

監修:前田晃介
FP・宅建。まがりDEバナナ(ピーク時108店舗)、癒し〜ぷ(約40店舗)の本部を立ち上げ、そば屋・うなぎ屋を経営。詳しく

公開 2026年10月27日

前田晃介が事業をゼロからつくる1年を、数字ごと見る。

使ったお金・判断・失敗まで公開する会員制のコミュニティ。まずは無料のLINEで記録を受け取れます。

あわせて読みたい