
2026/10/28
農業で起業するには|新規就農の支援制度(経営開始資金165万円)と農地の借り方
農業で起業する人には、49歳以下なら経営開始から最大3年間、年間165万円の経営開始資金があります(農林水産省)。機械・施設の導入を助ける経営発展支援事業、無利子で3,700万円まで借りられる青年等就農資金、令和5年4月に下限面積要件がなくなった農地の借り方まで、公的機関の情報で整理しました。
- A新規参入者(土地や資金を自分で用意して始めた人)
- 3,360人令和7年。新規就農者全体は4万2,850人(農林水産省「新規就農者調査」)
- A経営開始資金
- 年間165万円月13.75万円を経営開始から最大3年間。49歳以下が対象(農林水産省)
- A就農準備資金
- 年間最大165万円農業大学校や先進農家での研修中に最長2年間
- A経営発展支援事業(通常枠)
- 国費上限500万円機械・施設の導入など。国の補助上限1/2。経営開始資金の交付対象者は上限250万円
- A青年等就農資金
- 3,700万円貸付限度額(特認1億円)。無利子・償還17年以内(福岡県の案内)
- A就農1年目の費用と自己資金の差額(露地野菜)
- -263万円新規参入者の平均。施設野菜は-977万円(全国農業会議所 令和6年度調査)
農業で起業する49歳以下の人には、経営開始から最大3年間、年間165万円(月13.75万円)の経営開始資金があります(農林水産省、2026年10月28日閲覧)。農地は、令和5年4月1日から「借りる人の耕作面積が一定以上」という下限面積要件がなくなり、小さな面積からでも借りやすくなりました。
一方で、農業は始めた年に出ていくお金が大きい事業です。全国農業会議所の調査では、土地や資金を自分で用意して始めた人の就農1年目の費用と自己資金の差額は、露地野菜で-263万円、施設野菜で-977万円でした。ここでは、国・自治体の制度と統計から、農業で起業するときの支援制度・お金・農地の借り方を整理します。
| 制度・数字 | 中身 | 出典 |
|---|---|---|
| 経営開始資金 | 年間165万円を最大3年間 | 農林水産省 |
| 就農準備資金 | 研修中に年間最大165万円を最長2年間 | 農林水産省 |
| 経営発展支援事業(通常枠) | 国費上限500万円・国の補助上限1/2 | 農林水産省 |
| 青年等就農資金 | 3,700万円まで無利子(特認1億円) | 福岡県 |
| 新規参入者 | 3,360人(令和7年) | 農林水産省 |
農業で起業するとは?3つの始め方
農業で起業するとは、自分で農地や機械を用意し、作物を作って売る農業経営を始めることです。農林水産省の「新規就農者調査」は、新しく農業を始めた人を次の3つに分けています。
| 区分 | 中身 | 令和7年の人数 |
|---|---|---|
| 新規自営農業就農者 | 農家(個人経営体)の世帯員が、学生や勤めから自営農業に移った人 | 2万9,240人 |
| 新規雇用就農者 | 法人などに常雇い(年間7か月以上)で雇われて農業に就いた人 | 1万250人 |
| 新規参入者 | 土地や資金を独自に調達し、新たに農業経営を始めた経営の責任者と共同経営者(親の農地を譲り受けた場合を除く) | 3,360人 |
令和7年の新規就農者は4万2,850人で、前年より1.5%減りました。新規参入者3,360人のうち49歳以下は2,300人です。新規参入した部門は、露地野菜作が1,050人ともっとも多く、次が果樹作の810人、稲作の540人でした。
家業を継がずに一から始める「起業」に当たるのは、主に新規参入者です。雇用就農で技術を身につけてから独立する人もいます。
新規就農の支援制度:給付金と補助と融資
国の支援は、研修中の給付、開業直後の給付、機械・施設への補助、無利子の融資の4つに分かれます。
| 段階 | 制度 | 中身 | 窓口 |
|---|---|---|---|
| 研修中 | 就農準備資金 | 道府県農業大学校や先進農家などで研修する間、月13.75万円(年間最大165万円)を最長2年間 | 都道府県など |
| 経営開始直後 | 経営開始資金 | 経営開始から経営が安定するまで最大3年間、月13.75万円(年間165万円) | 市町村 |
| 機械・施設の導入 | 経営発展支援事業(通常枠) | 49歳以下の認定新規就農者が対象。国費上限500万円、国の補助上限1/2 | 市町村 |
| 設備資金の借入れ | 青年等就農資金 | 認定新規就農者に日本政策金融公庫が無利子で融資。限度額3,700万円(特認1億円)、償還17年以内(うち据置5年以内) | 日本政策金融公庫 |
就農準備資金と経営開始資金は、49歳以下の人が対象です。経営発展支援事業は、都道府県が新規就農者の初期投資を支援する場合に、都道府県の支援分の2倍を国が支援する仕組みです。経営開始資金を受け取る人は、経営発展支援事業の国費の上限が250万円になります。
経営発展支援事業(通常枠)の主な要件は次のとおりです(令和8年度予算のPR版)。
- 独立・自営就農する認定新規就農者であること
- 経営開始5年目までに農業で生計が成り立つ、実現できる計画であること
- 地域計画の目標地図に位置付けられているか、農地中間管理機構から農地を借りていること
- 機械・施設の取得費用(本人負担分)について、金融機関から融資を受けていること
農業を始めるのに必要なお金
農業は、作る作物によって必要なお金が大きく違います。全国農業会議所・全国新規就農相談センターの「新規就農者の就農実態に関する調査結果」(令和6年度、就農後おおむね10年以内の人が対象)から、新規参入者の就農1年目の「営農費用と自己資金の差額」を作目ごとに並べると、次のとおりです。
| 作目 | 就農1年目の費用と自己資金の差額(平均) |
|---|---|
| その他の畜産 | -1,262万円 |
| 施設野菜 | -977万円 |
| 水稲・麦・雑穀類・豆類 | -604万円 |
| その他耕種作物 | -579万円 |
| 花き・花木 | -571万円 |
| 果樹 | -305万円 |
| 露地野菜 | -263万円 |
酪農は費用合計が4,716万円と群を抜いて大きく、営農面での自己資金の準備額は858万円、差額は-3,858万円でした。ただし酪農は就農1年目の農産物売上高が2,878万円あり、差額の約7割をまかなっています。
農地の借り方:農業委員会の許可と農地バンク
農地を借りて耕すには、市町村の農業委員会の許可(農地法第3条)が要ります。広島市の案内では、耕作を目的に農地の所有権を移したり、賃貸借や使用貸借などの権利を設定したりする場合は、農業委員会の許可が必要です。
以前は、権利を取得する人の耕作面積が下限面積(広島市では10アール=1,000平方メートル)を上回る必要がありましたが、農地法の一部改正で令和5年4月1日から下限面積要件が廃止されました。次の要件は引き続き求められます。
| 要件 | 中身 |
|---|---|
| 全部効率利用要件 | 申請する農地も含め、所有・借りている農地のすべてを効率的に耕作すること |
| 農作業常時従事要件 | 申請者か世帯員などが、農作業に常時従事すること |
| 地域との調和要件 | 周辺の農地の利用に影響を与えないこと |
農地を探す方法としては、農地中間管理機構(農地バンク)があります。農林水産省によると、農地中間管理機構は都道府県・市町村・農業団体などが出資する法人で、都道府県知事が県に一つに限って指定します。所有者不明農地や遊休農地も含めて所有者から借り受け、担い手などに貸し付けます。地域によっては「農地バンク」「機構」「公社」などと呼ばれています。
農業で起業する手順
- 相談窓口に行く:都道府県の就農相談窓口や市町村で、作りたい作物と地域の支援を聞きます。
- 研修を受ける:農業大学校や先進農家で技術を学びます。49歳以下なら、研修中に就農準備資金を受けられる場合があります。
- 青年等就農計画をつくり、認定を受ける:市町村から認定新規就農者の認定を受けます。
- 農地を借りる:農業委員会に相談し、農地法第3条の許可か、農地バンクを通じた貸し借りで農地を確保します。
- 機械・施設をそろえる:経営発展支援事業や青年等就農資金を組み合わせて、初期投資の負担を減らします。
- 開業届を出す:個人で始めるなら税務署に開業届を出します。届出の一覧は個人事業主になるにはにまとめています。
よくある質問
農業で起業するときに使える給付金はありますか?
49歳以下で新たに農業を始める人には、農林水産省の経営開始資金があります。経営開始から最大3年間、月13.75万円(年間165万円)が交付されます。窓口は市町村です。
農地を借りるにはどうすればいいですか?
農地の賃貸借には農業委員会の許可(農地法第3条)が要ります。都道府県の農地中間管理機構(農地バンク)を通じて借りる方法もあり、まず市町村の農業委員会に相談します。
小さな面積からでも農地を借りられますか?
令和5年4月1日に、農地を借りる人の耕作面積の下限(広島市は10アール)を求める要件が廃止されました。ただし、すべての農地を効率的に耕作することなどの要件は残っています。
農業を始めるのにお金はいくら要りますか?
全国農業会議所の令和6年度調査では、新規参入者の就農1年目の費用と自己資金の差額は、露地野菜で-263万円、施設野菜で-977万円でした。作る作物で大きく変わります。
出典
- 農林水産省「就農準備資金・経営開始資金」(2026年10月28日閲覧)
- 農林水産省「経営発展支援事業」PR版(令和8年度予算)(2026年10月28日閲覧)
- 福岡県「青年等就農資金」(2026年10月28日閲覧)
- 広島市「農地の権利移動をする場合の手続き」(2025年9月2日更新・2026年10月28日閲覧)
- 農林水産省「農地中間管理機構」(2026年10月28日閲覧)
- 農林水産省「令和7年新規就農者調査結果」(令和8年8月25日公表・2026年10月28日閲覧)
- 農林水産省「新規就農者調査 調査の概要(用語の説明)」(2026年10月28日閲覧)
- 全国農業会議所・全国新規就農相談センター「新規就農者の就農実態に関する調査結果」(令和6年度)(2025年3月公表・2026年10月28日閲覧)
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監修:前田晃介
FP・宅建。まがりDEバナナ(ピーク時108店舗)、癒し〜ぷ(約40店舗)の本部を立ち上げ、そば屋・うなぎ屋を経営。詳しく
公開 2026年10月28日
前田晃介が事業をゼロからつくる1年を、数字ごと見る。
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