
2026/10/28
移動スーパー・移動販売の開業|始め方と必要な許可、開業費用と売上の数字
移動スーパーは、包装済みの食品をそのまま売るなら保健所への営業届出、鮮魚介類をそのまま売るなら魚介類販売業の許可で始められます。店まで500m以上で車を使えない高齢者は904万人(2020年)。とくし丸の開業資金70万円からなど、開業費用と売上の数字をまとめました。
- A食料品アクセス困難人口
- 904万人2020年。店まで500m以上かつ65歳以上で自動車を使えない人(農林水産政策研究所)
- Aとくし丸の稼働台数
- 約1,200台2025年現在。140社を超えるスーパーマーケットと提携
- Aとくし丸の開業資金
- 70万円から車両をリースにした場合。加盟金・契約金・研修費は0円
- A販売パートナーの平均売上高
- 560万円(年間)2025年。開業から1年以上・年間240日以上稼働した人のみ(とくし丸)
- A販売パートナーの収入の計算式
- 売上の17%+販売手数料とくし丸の収入シミュレーション。これに営業日数を掛ける
- A移動販売車の導入補助(鳥取県)
- 1事業あたり500万円県の補助限度額。補助率は県1/2。2026(R8)年度
移動スーパー(食料品の移動販売)は、包装済みの食品をそのまま売るなら保健所への営業届出、鮮魚介類をそのまま売るなら魚介類販売業の許可を受けて始めます(宮城県、2026年10月28日閲覧)。カップ麺やペットボトル飲料のように常温で長期間品質が劣化しない包装品だけなら、届出も要りません。
需要の大きさは、農林水産政策研究所の推計に表れています。店まで直線距離で500m以上あり、65歳以上で自動車を利用できない「食料品アクセス困難人口」は、2020年に全国で904万人、65歳以上人口の25.6%でした。このページでは、移動販売・移動スーパーの許可、開業費用、売上のしくみを、公的機関と事業者の公開情報から整理します。
移動販売とは:お客の家の近くまで店ごと出向く商売
移動販売とは、商品を積んだ車で決まった地域を回り、お客の家の近くで売る商売のことです。食料品と日用品をそろえて巡回するものを、移動スーパーと呼びます。
| 形 | 売るもの | 主な手続き(宮城県の例) |
|---|---|---|
| 移動スーパー(包装品中心) | 包装済みの肉・魚、乳製品、加工食品、日用品 | 営業届出(乳類販売業・食肉販売業(包装)・魚介類販売業(包装)など) |
| 鮮魚の移動販売 | 鮮魚介類(冷凍したものを含む) | 魚介類販売業の許可 |
| キッチンカー | 車内で調理した料理 | 飲食店営業の許可 |
車内で調理して出すキッチンカーは、同じ「自動車による営業」でも飲食店営業の許可が必要で、設備の基準も違います。調理して売る場合はキッチンカーの始め方をご覧ください。
食料品アクセス困難人口のうち、75歳以上は566万人で、75歳以上人口の31.0%にあたります。2015年との比較では、データが異なるため連続しないものの、全国で9.7%増えています。
必要な許可と届出
移動販売の手続きは、何を、どんな状態で売るかで決まります。宮城県の案内をもとに整理すると次のとおりです。
- 常温で長期保存できる包装品だけを売る:カップラーメンやペットボトル入り飲料など。許可も届出も不要です。
- 包装済みの冷蔵・冷凍品などを売る:専ら容器包装に入れられた状態で仕入れ、そのまま売る場合は、営業許可ではなく営業届出になります。
- 鮮魚介類を売る:自動車で鮮魚介類(冷凍を含む)を売る営業は、魚介類販売業の許可が必要です。
- 車内で調理して出す:飲食店営業の許可が必要です。
許可が必要な場合、申請から許可までは通常2週間程度かかります。申請先は、申請者の所在地か主たる営業場所を管轄する保健所です。許可を取るときに食品衛生責任者の資格がなければ、誓約書を出して、申請日か届出日から6か月以内に資格を取ります。
開業費用:とくし丸の公開情報
移動スーパーの開業費用を詳しく公開している例として、全国でスーパーマーケットと提携する「とくし丸」の販売パートナー募集サイトを見ます。販売パートナーは原則として個人事業主で、地域のスーパーマーケットと直接契約して開業します。
| 項目 | 一括購入 | リース |
|---|---|---|
| 合計 | 約400-430万円 | 約70万円 |
| 加盟金・契約金・研修費 | 0円 | 0円 |
| 車両購入費 | 約370~400万円 | 約50万円 |
| 車両購入オプション | 約10万円 | 約10万円 |
| 食品衛生責任者養成講座受講費 | 約1万円 | 約1万円 |
| 諸経費 | 約10万円 | 約10万円 |
※車両代金は価格改定の可能性があります。リースは頭金50万円・100万円・150万円のプランがあり、月額リース料がかかります。
契約は初回の締結日から1年ごとの自動更新で、契約期間中の退職にペナルティは設けていないとしています。同じエリアに2台以上が稼動しないエリア制で、拠点のスーパーマーケット近くの人口や高齢者の割合を見てエリアを決めます。
売上と収入のしくみ
移動スーパーの売上は、売上 = 客数 × 客単価です。とくし丸の全国平均は、1日の客数35~45名、客単価2,000~2,500円です。この幅で1日の売上を計算すると、次のようになります。
35名 × 2,000円 = 7万円 / 45名 × 2,500円 = 11.25万円
とくし丸の販売パートナーの収入は、収入=(売上の17%+販売手数料)×営業日数と示されています。日々の売上はいったんスーパーマーケットに預け、規定日に指定口座へ振り込まれます。同社の収入シミュレーション(営業日数25日)は次のとおりです。
| 1日の売上 | 月収(想定) | 年収(想定) |
|---|---|---|
| 8万円 | 36万円 | 430万円 |
| 10万円 | 45万円 | 540万円 |
| 12万円 | 54万円 | 650万円 |
| 16万円 | 72万円 | 870万円 |
実績としては、開業から1年以上経ち、年間240日以上(週5以上)稼働した販売パートナーの平均売上高が、2025年1月1日〜12月31日で560万円(年間)と公表されています。ここから車両のリース料や燃料費などの経費を払います。
移動販売車の補助金
移動販売車の購入や運営費を補助する制度は、国の一律の制度ではなく、自治体ごとにあります。例として、鳥取県の「2026(R8)年度 鳥取県広域移動販売支援事業費補助金」は、県内の複数市町村にまたがって移動販売をする事業者が対象です。
| 支援 | 県の補助限度額 | 補助率 |
|---|---|---|
| 移動販売車等の導入 | 1事業あたり500万円 | 県1/2 |
| 車両の更新 | 1台あたり300万円 | 県1/3 |
| 運営費(燃料費・車検費用・リース料など) | 1台あたり100万円(1年目)、70万円(2年目)、40万円(3年目以降) | 市町負担額の1/2 |
対象は、食料品と日用品を広く積み、あらかじめ決めた販売ルートで恒常的に移動販売をする車です。販売エリアの市町村への確認が補助の条件になっています。開業する地域の市町村と都道府県に、同じような制度があるか確かめましょう。
始め方
- 回る地域を決める:高齢者が多く、店が遠い地域を選びます。
- 仕入れ先を決める:自分で仕入れるか、とくし丸のようにスーパーマーケットと組むかを決めます。組む場合の契約の見方はフランチャイズとはも参考になります。
- 売る品目を決めて保健所に相談する:包装品だけか、鮮魚もあるかで、届出か許可かが変わります。
- 車を用意する:購入かリースかを比べ、補助金が使えるか自治体に確かめます。
- お客を探す:エリアの家を回ってあいさつし、定期的に訪問するルートをつくります。
よくある質問
移動スーパーを始めるのに許可は要りますか?
包装済みの食品をそのまま売るなら保健所への営業届出、鮮魚介類を売るなら魚介類販売業の許可が要ります。常温で長期保存できる包装品だけなら届出も不要です(宮城県)。
移動販売の開業費用はいくらですか?
とくし丸の場合、車両を一括購入すると約400〜430万円、リースなら約70万円からです。どちらも加盟金・契約金・研修費は0円で、食品衛生責任者の講習費などが別にかかります。
移動販売は儲かりますか?
とくし丸の公表では、開業1年以上で年間240日以上稼働した販売パートナーの平均売上高は年560万円です。収入は売上の17%+販売手数料で、客数と客単価で決まります。
移動販売車に使える補助金はありますか?
国の一律の制度ではなく、自治体ごとにあります。鳥取県は複数市町村で営業する事業者に、車両導入費を1事業あたり500万円(補助率1/2)まで補助しています。
出典
- 農林水産省「2020年食料品アクセス困難人口の推計結果の公表及び説明会の開催について」(令和6年2月27日・2026年10月28日閲覧)
- 宮城県「自動車を利用して食品の調理・販売を行う場合の手続きについて」(2026年10月28日閲覧)
- 移動スーパーとくし丸 販売パートナー募集サイト(2026年10月28日閲覧)
- 移動スーパーとくし丸「収入と支出」(2026年10月28日閲覧)
- 鳥取県「2026(R8)年度 鳥取県広域移動販売支援事業費補助金」(2026年10月28日閲覧)
数字は出典の時点のものです。誤りや古くなった数字を見つけたらこちらからお知らせください。

監修:前田晃介
FP・宅建。まがりDEバナナ(ピーク時108店舗)、癒し〜ぷ(約40店舗)の本部を立ち上げ、そば屋・うなぎ屋を経営。詳しく
公開 2026年10月28日
前田晃介が事業をゼロからつくる1年を、数字ごと見る。
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